テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想 | 橘玲 著 (文春新書) を読んだ。

たまたまamazon見てたらレコメンドされてきたので。 普段、こういうイデオロギーを扱う本は読まないんだけれど、イーロン・マスクとかサム・アルトマンの表紙に釣られた。

目次がインターネット上で見当たらなかったので、引用しておく。

普段イデオロギーに触れていない自分でも PART0 で政治思想をざっくり理解できたので、そこだけでも読む価値があったと思える。 特に図がわかりやすかった。

PART1以降は、イーロン・マスク、ピーター・ティール、サム・アルトマン、ヴィタリック・ブテリンの個別のストーリーから紐解く感じで。 テック業界で有名な出来事を中心に展開されていたので自分は面白かったが、人物中心で進んでいくので本書のテーマを忘れそうになった。 アルトマンの解任理由の背景とかEthereumのハードフォークとか、よくまとまってたと思う(記述が正確かどうかは自分には判断しきれないが)

PART2ではクリプト・アナキズム(無政府主義)について書かれているが、著者はそれを全肯定するのではなく、

その行き着く先は、途方もない「自由」に耐えられる「1パーセントのマイノリティ」のためだけの世界なのかもしれない

と評している。

PART3ではクリプト・アナキズムに対するものとして安藤馨の「統治と功利」から「総督府功利主義」を持ち込み、個人の自由は前提として、統治者の功利性(費用対効果)について論じる。

総督府功利主義は「国民が自由気ままに振る舞うことで社会全体の功利が最大化されるようなアーキテクチャ(社会構造)」を目指すが、それには監視システムが不可欠だ。まさにサイコパスの世界。

PART4では、そもそもテクノ・リバタリアンの敵は政府などではなく、人類の進化的な制約や認知的な脆弱性であり、特定のイデオロギーではなくテクノロジーが世界を牽引する、と述べる。

PARTXでは、テクノ・リバタリアンともはや関係なく、著者が認識する世界と人類の構造について述べている印象だが、これが結構面白かった。

感想

IT業界の著名人についてのストーリーや、PART0での政治思想の解説、PARTXでの世界と人類への認識など、読んでいてとても面白かったので満足感は高い。

しかし、肝心の「テクノ・リバタリアン」がどのようなものなのか、はよくわからなかった。 「はじめに」では「世界を数学的に把握するものたち」と定義していたが、彼らがしている数学的な思考方法が具体的にどのようなものかはよくわからなかった。これは、「はじめに」でベイズ定理を持ち出していたので、そのようなレベルまで掘り下げて本文で語られるのを期待してしまったからかもしれない。

本書を読んで、そもそもリバタリアンとは何かをもう少し理解したいな、と思ったので、次は直接リバタリアンについて解説した本を読もうかな。イデオロギー系の本は、注意深く選ばないとハズレも多そうだが・・・